※図鑑の紹介文は以下のサイトを参考にさせていただきました。
日本花の会 桜図鑑 https://www.hananokai.or.jp/sakura-zukan/
このはなさくや図鑑〜美しい日本の桜〜 https://www7b.biglobe.ne.jp/~cerasus/

① 紅豊 ベニユタカ
・中咲き ・濃紅色
・八重咲き(15〜18枚)
・大輪(4.8〜5cm)
百想園内の記念碑にメッセージを寄せてくださった浅利政俊先生は、桜の名所松前の桜守りで、世界屈指の桜研究者です。紅豊は松前公園の南殿(血脈桜)と龍雲院紅八重の交配で、1961年に浅利先生が生み出した品種です。大輪の花は脈に沿って紅色が濃く花つきも良い。とても丈夫で寒さに強く小樽の気候にあっています。
② 関山 カンザン
・遅咲き ・濃紅色
・八重咲き(28〜33枚)
・大輪(4.5〜5.5cm)
朝里川遊歩道に80本程植えられ5月中旬以降に濃いピンク色の並木をつくります。花色と生育の良さで海外でも広く栽培されていて、塩漬けされた花は桜湯に使われます。樹勢は強く巨木になります。
ところで「八重咲き桜」という名前の桜はありません。この桜は八重咲き品種の代表格なのでなかなか「カンザン」と品種名で呼んでもらえません。ぜひ覚えてあげて下さいね。
③ 雅 ミヤビ
・中咲き ・濃紅紫色
・一重咲き(5枚)
・中輪(3〜3,5cm)
皇后陛下雅子様のご成婚を記念して「プリンセス雅」と名付けられ、今は「雅」と呼ばれています。寒緋桜と他種との自然交配種と推定されています。鮮やかな紅色で楕円形の花弁は下向きに半分だけ開くように咲きます。コンパクトに栽培でき、花の期間も長いので、庭植えや鉢植えでも人気があります。
④ 八重山古志 ヤエヤマコシ
・中咲き ・紅紫色
・半八重咲き(7〜12枚)
・中輪(3〜3,5cm)
原木は新潟県長岡市山古志村で発見された新種でしたが、2004年の中越地震後消滅したと考えられていました。その後愛好家が接ぎ木で保存していたものが普及しています。
百想園では濃紅色の紅豊や雅と時期を同じくして開花しますが、咲き始めは薄紅色なのでとても良いアクセントになっています。
⑤ 楊貴妃 ヨウキヒ
・遅咲き ・淡紅色
・八重咲き(15〜20枚)
・大輪(3,5〜4.5cm)
江戸時代の文献にも名前がある古品種です。昔、奈良の興福寺の庭にあった名木の花色も優れた豊満な美しさから中国の「楊貴妃」を連想して名付けたといわれます。羽二重のような柔らかに波打つ花弁は、内部が白く、外にむかって紅色が濃くなります。帯茶色の若葉は開花前に展葉します。
写真は園内の川下側看板そばのまだ若い個体です。園内中央花壇にも楊貴妃として購入した大きな桜があるのですが、これがもしかしたら他の品種と取り違えているのかもしれなくて調査中です。
⑥ 御殿場桜 ゴテンバザクラ
・中咲き ・淡紅色
・一重咲き(5枚)
・中輪(3〜3.5cm)
静岡県御殿場市で栽培されていた豆桜と他種の交雑種。小ぶりの一重咲きですが、根本から梢までびっちりと花をつけるのが特徴。挿し木も容易なので、盆栽や生垣にも使われています。花期がとても長く当園では5月上旬から約1ヶ月咲いていたことがありました。
⑦ 陽光 ヨウコウ
・中咲き ・紅色
・一重咲き(5枚)
・大輪(4〜4.5cm)
天城吉野と寒緋桜の交配で愛媛県の高岡正明氏が作出し1981年品種登録されています。花は下向きに咲き、花弁は脈がはっきりと出て、しわが多い。同じ寒緋桜との交配種の雅と比べると、ヨウコウは花びらが丸く、咲き進むと花が全開します。
⑧ 千島桜 チシマザクラ
・早咲き ・白〜極淡紅色
・一重咲き(5枚)
・小輪(1.5〜2.5cm)
北海道、サハリン、千島列島に分布する野生種でタカネザクラの変種。葉や小花柄、萼筒などに毛があり、樹形は盃状で低く地を這うので、実は上向きにつきます。百想園では大山桜より5日ほど早く咲きはじめます。
⑨ 福禄寿 フクロクジュ
・遅咲き ・淡紅色
・八重咲き(15〜20枚)
・大輪(4.5〜5cm)
東京の荒川堤で栽培されていた品種。花弁に波打つようなシワがあり不規則にねじれます。雌しべは正常なもの1本と奇形が混じり、実はつきません。福禄寿という縁起の良い名前の通り、鮮やかなピンクの花が枝いっぱいにつきます。見上げると幸せな気持ちになれますね。
⑩ 冬桜 フユザクラ
・早咲き ・白色
・一重咲き(5枚)
・中輪(3〜3.5cm)
豆桜と里桜または山桜との雑種と推定されます。二季咲き性で道南の松前では10月中旬〜11月にも咲きます。百想園では雪どけ後、フクジュソウが咲く頃に千島桜よりも先に開花しますが、秋に花が咲いたことはまだありません。清楚な白い花はなごり雪のようです。
⑪ 普賢象 フゲンゾウ
・遅咲き ・淡紅色
・八重咲き(30〜40枚)
・大輪(4.5〜5.5cm)
室町時代から知られる古品種で、葉化した2本の雌しべの先端が曲がっている様が普賢菩薩が乗る象の鼻に似ていることが命名の由来です。若芽は帯茶色、花は肌色のような淡いピンク色で、咲き進むと白っぽくなっていきます。実はつきません。
⑫ 一葉 イチヨウ
・遅咲き ・淡紅白色
・八重咲き(22〜25枚)
・大輪(4.5〜5cm)
花の中にある1本の雌しべが葉化して突き出でた様子から名前がつきました。葉化とは雌しべの花柱の部分が、緑色の葉のように変質すること。このため雌しべの役割を持たず実が出来ません。葉化雌しべを持つものの代表に「普賢象」があります。
写真はホテル宏楽園の庭園で撮影したものです。百想園では開園当初に植えた個体が枯れてしまい、現在はまだ若い木なので、花が見られるようになるのはもう少し先になりそうです。
⑬ 天の川 アマノガワ
・遅咲き ・極淡紅色
・八重咲き(15〜17枚)
・中輪(3〜3.5cm)
たくさんの細い枝が上向きに伸び円柱状の樹形になるのが特徴です。狭い庭でも横に広がらないので人気があります。白い花も上向きに咲き、開花に少し遅れて展葉する若葉の緑も美しいです。遠くから見ると白いポプラのようで、初めて見た人は桜と気が付かない様子です。サクランボを逆さにしたように果実も上向きにつきますよ。
百想園の天の川は植え付けて数年後に根本に出来た「癌腫病」で弱ってしまいましたが、治療の甲斐あって今は園内でも上位に並ぶ背丈に育ちました。すべてが上向きの運の良い桜です。
⑭ 八重紅大島 ヤエベニオオシマ
・遅咲き ・淡紅色
・八重咲き(20〜30枚)
・大輪(4〜4.5cm)
大島桜の花弁が八重化し淡紅色に変化した品種です。花の中心花弁が、ねじれ立つようにつくのが特徴で、大島桜と同様に潮風に強い性質。
百想園では近年植樹した品種で、花つきがまだまばらです。画像はホテル宏楽園にて撮影した同品種です。
⑮ 兼六園菊桜
ケンロクエンキクザクラ
・遅咲き ・淡紅色
・菊咲、段咲き(100〜170枚)
・大輪(3.5〜4cm)
当園内では最も遅咲きです。開花前に若葉が開くので、その花の存在を知らない人も多い隠れた名花です。二段の菊咲きで花は球形、蕾は濃い紅色です。はじめは淡紅色に開き、その後口紅のように赤い花の中心からもう一つの花が押し出るように咲くので二段咲きといいます。原木は金沢市・兼六園にあったもので、現在も後継樹が育てられています。
幼木の頃は花を見るのも難しかったのですが、現在は樹の下に入れる大きさに育ったので、愛らしい花を下から観察して下さい。
⑯ 大漁桜 タイリョウザクラ
・中咲き ・淡紅色
・一重咲き(5枚)
・中輪(2.5〜3.5cm)
原木は熱海市の網代漁業組合の網干場にあり鯛の色に似た花色から命名されました。早咲きの大島桜と寒緋桜の交配種です。花弁は縁にピンク色が濃く、先端には深い切れ込みがあります。
百想園には宏楽園の桜を管理している樹木医の金田正弘先生から寄贈された木があります。宏楽園では見事な大木になっていますが、百想園ではここ数年ようやく花がつき始めました。画像の大樹は宏楽園で撮影。
⑰a 紅枝垂 ベニシダレ
・中咲き ・紅紫色
・一重咲き(5枚)
・小輪(1.5〜2.0cm)
枝垂桜の中で花色が濃紅色の品種ですが、個体によって紅色の濃さや花形および開花時期などに変異がみられます。花びらは細長く花の縁に濃い色が残ります。
新光南会館横のテラスの塀沿いに植えられています。まだ若い個体なので花つきはまばらです。画像の2枚目は宏楽園にある同品種です。
⑰b 八重紅枝垂 ヤエベニシダレ
・中咲き ・紅紫色
・八重咲き(20〜30枚)
・小輪(1.5〜2.5cm)
エドヒガンの枝垂れ八重咲きで、江戸時代からある古品種。平安神宮に献上され京都の社寺に多いことで「平安紅枝垂」の別名で販売されているものもあります。ホテル宏楽園玄関前の大木は壮観。
新光南会館横テラスの中央に植樹されました。枝垂れ品種は冬囲いも難しいので、この個体も植え替えて数年は育成に苦労しましたが、ようやく花つきが良くなってきました。会館の中沖館長さんが丹精込めて管理しています。
⑱ オヒョウ桃(シベリア桜)
・遅咲き ・ピンク色
・八重咲き
・小輪(2〜2.5cm)
名前は葉がニレ科のオヒョウに似ていることからつきました。シベリアザクラの別名がありますが、桜ではなくシベリアにも自生していません。中国北部原産で寒さに強く、日当たりを好みます。花桃の品種で実はつきません。
⑲ 大島桜 オオシマザクラ
・遅咲き ・白色
・一重咲き(5枚)
・大輪(4〜4.5cm)
百想園のこの個体は、実は全く別名の品種の札で購入していました。それは八重咲きの品種だったのですが、成長して花がついたら一重咲きでびっくり。樹木医の先生に尋ねたところ「大島桜系」とのこと。
大島桜は伊豆諸島に分布する野生種で、塩漬けにした葉は桜餅に用いられます。葉や花が大きく、芳香の有無や形態、開花期などに多くの変異がみられます。他の桜との交雑によって生じた品種も多数あるので特定は難しいようです。
⑳ 大山桜 オオヤマザクラ
(エゾヤマザクラ)
・早咲き ・淡紅色〜紅紫色
・一重咲き(5枚)
・中〜大輪(3〜4.5cm)
北海道、本州、四国の冷温帯に分布する野生種。エゾヤマ桜・ベニヤマ桜とも呼ばれて親しまれています。花柄はごく短く花芽の鱗片が粘るのが特徴です。花色や各部の大きさ、開花期にかなりの個体差があり、朝里川遊歩道内でも多様性が見られます。日々観察しながら散策するのが楽しい個性豊かな桜です。
㉑ 染井吉野 ソメイヨシノ
・早咲き ・淡紅色〜白色
・一重咲き(5枚)
・中輪(3〜3.5cm)
江戸時代末期に江戸染井村(現東京都豊島区)の植木屋が「吉野桜」として売り出したと伝わります。大島桜と江戸彼岸の雑種と推定され接ぎ木で栽培されます。宏楽園の庭園の見事な並木は有名ですね。新光南会館玄関前から遊歩道に下る小道の脇にこの染井吉野が植えられています。